「コンタクトレンズって、結局どれを選べばいいの?」日々コンタクトを使っている方の中には、装用中の目の乾きや疲れ、なんとなくの不快感に悩まされている方も多いのではないでしょうか。
そんなとき目にするのが“酸素透過率”という言葉。でも、数値の見方が分からなかったり、自分に本当に必要な性能なのか迷ってしまったりしますよね。
この記事では、「酸素透過率とは何か?」という基本から、数値の目安、使用シーン別の選び方、そして購入時の確認ポイントまで、丁寧にわかりやすく解説しています。
あなたの目にぴったりなコンタクトレンズを見つけるためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
酸素透過率ってなに?目に必要な酸素との関係
コンタクトレンズを使うときに見逃せないのが「酸素透過率」という言葉。これは、レンズを通じて目にどれだけ酸素が届くかを示す大切な指標です。
そもそも、なぜ酸素が必要なのか?どこから酸素を取り入れているのか?まずは目の仕組みから確認してみましょう。
酸素は角膜にどう届く?目の構造をやさしく解説
角膜は黒目の表面を覆う透明な組織で、光を通す役割があります。この角膜には血管がなく、体内から酸素を供給することができません。代わりに、空気中の酸素を涙を通して直接取り入れているのが特徴です。
▼角膜に酸素が届く主なルート
酸素供給経路 | 説明 |
空気中から涙を通じて | 瞬きによって酸素が涙に溶け、角膜へ届けられる |
結膜の血管から間接供給 | 血管からの供給もごくわずかに行われる ※主な酸素供給源は涙液を通じた空気中の酸素 |
閉眼時の供給量 | まぶたを閉じると酸素供給は大幅に低下する ※目を開いているときの約3分の1まで減少 |
このように、角膜は外部環境に大きく依存して酸素を取り入れています。コンタクトレンズを装用することで酸素の通り道が部分的に遮られるため「酸素の届きやすさ=透過率」が重要なポイントになるのです。
酸素透過率の意味と「Dk値」「Dk/L値」の違い
酸素透過率とは、コンタクトレンズを通してどれだけ酸素が目に届くかを示す数値です。レンズ選びでよく見かける「Dk値」や「Dk/L値」という表記は、その性能を定量的に表しています。
▼Dk値とDk/L値の違い
用語 | 意味 | 特徴 |
Dk値 | レンズ素材自体の酸素透過性 | 素材の性能を示す数値 |
Dk/L値 | Dk値をレンズの厚み(L)で割った数値 | 実際の装用時に近い性能を表す |
たとえば、同じ素材でもレンズが厚くなると酸素が通りにくくなり、Dk/L値は下がります。Dk値は素材の性能、Dk/L値は使用状態での性能と覚えておくと、表示を読み取る際の参考になります。
レンズを選ぶときには、単に「Dk値が高い=良いレンズ」とは限らず、厚みや使い方まで考慮することが大切です。特に長時間装用する人や度数が強い人ほど、「Dk/L値」に注目することで目の負担を減らせます。
酸素が足りないとどうなる?装用時の注意点
角膜に十分な酸素が届かないと、目の健康にさまざまな影響を及ぼします。酸素不足の状態が続くと、角膜の代謝や修復機能が低下し、違和感や視力の低下を引き起こすこともあります。
▼酸素不足によって起こりやすい症状
- 目の充血が続く
- レンズ装用中に痛みや異物感が出る
- 視界がかすむ、ぼやけることがある
- 長時間装用後に強い疲れを感じる
- 角膜に傷ができやすくなる
とくに怖いのは、初期段階では自覚症状が出にくいことです。違和感を感じる頃には、すでに角膜にダメージが蓄積している可能性もあります。
日常的に目を酷使している人ほど、装用時間やレンズの透過性を意識し、無理のない使い方を心がけることが大切です。
数値の見方と基準をチェック!酸素透過率の目安
コンタクトレンズを選ぶとき、「酸素透過率(Dk値・Dk/L値)」が重要といわれても、どのくらいの数値なら安心なのか分かりづらいですよね。レンズの性能を表すこの数値は、製品によって大きく異なります。
ここでは、一般的な目安と、使用目的ごとに適した酸素透過率の選び方、そして高酸素透過素材の特徴についてわかりやすく解説します。
一般的な数値はどのくらい?高い・低いの判断基準
酸素透過率は、数値が高いほど目に多くの酸素を届けられることを意味します。ただし、表示される「Dk値」や「Dk/L値」の基準はメーカーや製品によって異なるため、判断基準の目安を知っておくことが大切です。
▼Dk/L値の目安と評価の基準
Dk/L値の範囲 | 酸素透過性の評価 | 特徴・用途例 |
〜20 | 低い | 短時間使用・目が強い方向け |
21〜50 | 標準的 | 日常使い向け |
51〜100 | やや高い | 長時間使用を想定した設計 |
101以上 | 高酸素透過 | ドライアイや長時間装用に適応 |
このように、Dk/L値が24.1以上で終日装用に必要な酸素透過性があると定められており、80以上で裸眼の97%の酸素を通すとされています。100以上は非常に高い値にあたり、高酸素透過レンズといえます。
ただし、数値が高ければ高いほど良いというわけではなく、自分の使用スタイルに合わせて選ぶことが大切です。
とくに目の乾きや疲れやすさを感じやすい方は、高酸素透過タイプを検討する価値があります。逆に短時間しか装用しない方であれば、標準的なDk/L値でも十分快適に過ごせるでしょう。
【使用シーン別】日常使い・長時間装用での違い
同じコンタクトレンズでも、使う時間やシチュエーションによって求められる酸素透過率は変わります。ライフスタイルに合った数値を選ぶことが、快適な視界と健康な目を保つポイントです。
▼使用目的に応じた酸素透過率の選び方
使用シーン | 推奨されるDk/L値の目安 | 適したレンズの特徴 |
オフィスや外出時の数時間使用 | 20〜50 | 標準素材、使い捨てタイプも対応可能 |
仕事や勉強で長時間装用 | 50〜100 | 高酸素透過、シリコーン素材が多い |
睡眠中の装用(許可されている場合) | 100以上 | 医師の指導下での使用が必要 |
とくに、長時間装用する人ほどDk/L値の高さを重視する必要があります。酸素が足りないと、先ほど触れたように目のトラブルが起きやすくなります。逆に、短時間の使用ならそれほど高い数値でなくても快適な場合が多いため、バランスを考えた選択が大切です。
このように、酸素透過率の数値は「性能の高さ」を示すだけでなく、「自分の使い方との相性」も含めて見ていくことが重要です。
酸素透過率が高いコンタクトの素材と特徴
酸素透過率が高いコンタクトレンズは、主に使われている素材の違いによってその性能が実現されています。
特に注目すべきなのが「シリコーンハイドロゲル」という素材です。
▼素材ごとの酸素透過性と特徴
素材名 | 酸素透過性の傾向 | 特徴 |
ハイドロゲル | 低〜中程度 | 水分保持力が高く、乾燥しにくい |
シリコーンハイドロゲル | 高い | 酸素透過率が非常に高く、長時間向き |
シリコーン素材は、従来のハイドロゲルに比べて酸素の通しやすさが格段に優れており、Dk/L値が100を超える製品も多く存在します。一方で、素材がやや硬く感じる場合があり、装用感には個人差があるのも特徴です。
また、シリコーンハイドロゲル素材は、長時間のパソコン作業や外出など、目を酷使しがちな日常生活にも適していると言えるでしょう。最近では、乾燥感や異物感を軽減するために改良された製品も多く登場しています。
素材による違いを知っておくことで、数値だけでは分かりにくい「装用感」や「ライフスタイルとの相性」まで考慮した選び方がしやすくなります。
どう選ぶ?酸素透過率と快適性のバランス
酸素透過率は高ければ高いほど良い、と思われがちですが、実際のところは人によって適した数値やレンズのタイプが異なります。重要なのは、目の状態や使用スタイルに合わせて「快適性」と「酸素供給」のバランスをとること。
ここでは、酸素透過率のメリットと注意点、目の状態別の選び方、そして初心者と経験者でどう異なるのかをわかりやすく解説します。
酸素透過率が高ければいい?そのメリットと注意点
酸素透過率の高いレンズは、角膜により多くの酸素を届けることができるため、目の健康を守るうえで大きなメリットがあります。
とくに長時間コンタクトを装用する人にとっては、酸素不足によるトラブルを予防する意味でも有効です。
▼高酸素透過レンズの主なメリット
- 角膜への酸素供給量が多く、健康を保ちやすい
- 長時間装用でも目が疲れにくい
- 血管新生や角膜障害のリスクが低くなる
- 乾燥感が軽減されることがある
ただし、「酸素透過率が高い=すべての人に最適」とは限りません。高酸素透過のレンズはシリコーン素材が主流であり、やや硬めの装用感や乾燥しやすさを感じる人もいます。また、酸素が通りやすい一方で水分が蒸発しやすいという特性があるため、目の状態によっては合わないこともあります。
また、Dk/L値が高いレンズは価格帯もやや高めになりやすいため、自分の装用時間やライフスタイルに見合った性能があるかを冷静に判断することが大切です。
酸素透過率はあくまで「目にとって重要な指標のひとつ」であり、装用感や価格、取り扱いのしやすさなども含めて選ぶことで、より快適なレンズ生活が実現できます。
ドライアイや敏感な目にはどんなレンズが合う?
ドライアイの傾向がある人や、レンズの刺激に敏感な人にとっては、単に酸素透過率が高いだけでは快適な装用につながらない場合があります。素材や表面加工、レンズの水分保持力など、目の状態に応じた選び方が重要です。
▼ドライアイ・敏感な目に適したレンズの特徴
特徴 | 理由・効果 |
保水性が高いレンズ | 乾燥による刺激を抑える |
表面がなめらかな素材 | 摩擦が少なく、装用感がやさしい |
含水率が適度に低めのもの | 水分の蒸発が少なく、うるおいが長持ち |
ワンデータイプの製品 | 汚れやアレルゲンがたまりにくい |
また、酸素透過率が高いシリコーンハイドロゲル素材でも、表面加工が工夫されているタイプであれば、装用感がやわらかくドライアイに配慮されている製品もあります。
ドライアイの程度や目の状態によっても合うレンズは異なるため、最初は眼科で装用テストを受け、自分の目に合うものを選ぶことが安心です。目に優しい素材や機能を重視することは、長期的な目の健康にもつながります。
初心者と経験者で選び方はどう変わる?
コンタクトレンズの選び方は、初心者と経験者とでポイントが異なります。慣れている人は使用感や性能を細かく調整できますが、初心者の場合はまず扱いやすく、負担の少ないタイプを選ぶことが大切です。
▼ユーザー別の選び方の違い
ユーザータイプ | 向いているレンズの特徴 |
初心者 | 扱いやすい素材、短時間装用向け、ワンデータイプ |
経験者 | 高性能な酸素透過率、長時間使用向けの設計 |
初心者の場合、「酸素透過率が高い=良いレンズ」と思って選んでも、装用感が合わずに続けられないケースがあります。最初は標準的なDk/L値のワンデータイプから試し、慣れてきたらより高性能なタイプに移行していくのがおすすめです。
一方、経験者はライフスタイルや目の変化に応じて、装用時間や快適性のバランスを見ながらレンズを選び直す人も少なくありません。定期的に目の状態をチェックし、必要に応じて見直すことで、長く安心して使用できます。
購入前に確認!酸素透過率の調べ方と相談のコツ
コンタクトレンズを選ぶ際、「酸素透過率が高いものがいい」と聞いても、実際にどうやってその情報を確認するのか分からないという方も多いのではないでしょうか。
ここでは、購入前にチェックすべき情報の見つけ方や、眼科で相談する際に役立つポイント、そして酸素透過率以外にも注目したい性能について解説します。
パッケージ表示・メーカーサイトで見るべきポイント
コンタクトレンズの酸素透過率は、多くの場合、製品のパッケージやメーカー公式サイトに記載されています。ただし、見慣れない「Dk値」や「Dk/L値」が使われているため、読み取り方を知っておくことが大切です。
▼購入前に確認したい情報とその見方
表示項目 | 確認ポイント |
Dk値 | 素材の酸素の通しやすさ。数値が高いほど透過性が高い |
Dk/L値 | 実際の装用時における酸素透過性。厚みによって変動 |
含水率 | レンズの水分量を示す。装用感や乾燥に影響する |
素材名 | シリコーンハイドロゲルなど、酸素透過性に関わる |
特にDk/L値は、実際の使用環境に近い条件での透過率を示すため、より現実的な判断材料になります。メーカーによってはこの数値を非公開としている場合もあるため、その際は眼科や販売店に問い合わせるのが確実です。
また、比較サイトや商品レビューを参考にするのもひとつの方法ですが、最終的には公式情報を優先するようにしましょう。
眼科での相談時に伝えたい3つのこと
コンタクトレンズを選ぶ際、自己判断だけでなく、眼科で専門的なアドバイスを受けることがとても重要です。
中でも、酸素透過率に関する相談では、自分の目の状態や装用状況を具体的に伝えることがポイントになります。
▼眼科で伝えたい3つのこと
伝えるべき情報 | 内容のポイント・理由 |
1日の装用時間 | 長時間装用の場合は高酸素透過の必要性が高まる |
目の乾きや不快感の有無 | ドライアイや角膜トラブルなど、目の状態を把握する材料になる |
使用中または過去のレンズ | 合わなかった理由や好みの装用感から、より適した製品を提案してもらえる |
とくに「以前のレンズで不快感があった」「夕方になると目が重たくなる」など、些細な違和感でも伝えておくことで、自分では気づきにくい酸素不足や素材との相性を見抜くヒントになります。
酸素透過率以外にもチェックしたい性能とは?
酸素透過率は重要な指標ですが、それだけを基準にすると、装用感や快適性に差が出ることも。他にも確認しておくべき性能はいくつかあり、総合的に判断することで満足度の高い選択につながります。
▼レンズ選びで確認したいその他の性能
性能項目 | 影響する要素 |
含水率 | うるおい感や乾燥のしやすさに関わる |
UVカット機能 | 紫外線対策として有効 |
レンズの厚み | 装用感、Dk/L値に影響 |
形状保持性 | レンズの扱いやすさ、フィット感に関係 |
使用期間 | ワンデー・2weekなど衛生面の違い |
特に「UVカット機能」や「形状保持性」などは見落とされがちですが、目を長期的に守る上で役立つ性能です。例えば、外出が多い人にはUVカット機能があるタイプ、取り扱いに不安がある人には形状がしっかりしているタイプがおすすめです。
このように、酸素透過率とあわせて自分の生活や目の状態に合った複数の視点で選ぶことで、後悔しないレンズ選びができます。
まとめ
コンタクトレンズの酸素透過率は、目の健康を守るために非常に重要な指標です。
角膜は血管がないため、レンズを通してしっかりと酸素を届けられるかどうかが、装用中の快適さやトラブルのリスクに直結します。Dk値やDk/L値などの数値は少し複雑に感じるかもしれませんが、意味や違いを知っておくことで、自分に合った製品を選びやすくなります。
また、酸素透過率が高ければそれで良いというわけではなく、目の状態や使用時間、装用感とのバランスを考えることが大切です。ドライアイや敏感な目の方、初心者や長時間使用が多い方など、それぞれに合った選び方があります。
購入前にはパッケージや公式サイトで性能を確認し、必要に応じて眼科で相談することが安心です。酸素透過率だけでなく、含水率やUVカット機能など、ほかの性能にも目を向けながら、自分の目に本当に合ったレンズを選ぶようにしましょう。