SNSやネットで「冷蔵庫に入れて保管した方が長持ちする」といった情報を目にし、試してみたくなったり、うっかり入れてしまった経験はありませんか?
しかし、コンタクトレンズは目に直接触れるデリケートな医療用品。間違った保管方法は、目のトラブルや健康被害のもとになります。
本記事では「冷蔵庫で保管してもいいの?」という疑問に対して、普段は室温保管が基本である理由、万一冷蔵庫に入れてしまったときの対処法についても解説します。
コンタクトレンズは冷蔵庫で保管してはいけない理由
コンタクトレンズを冷蔵庫に入れるのは、おすすめできません(※)。ここでは、主なNG理由と、やむを得ない場合の注意点を解説します。
※特別な場合(真夏の車内など高温を避けたいとき)に限って選択肢になることもあります。
保存液が低温で変質する危険性
コンタクトレンズの保存液は、室温で安定するよう設計されています。冷蔵庫の低温下では成分が分離したり、抗菌効果が低下するおそれがあり、レンズの衛生状態に悪影響を及ぼします。
▼保存液が低温で変質した場合の影響
起こる変化 | リスクの内容 |
成分の沈殿 | 洗浄・抗菌力が不均一になる |
粘度の変化 | レンズにムラができやすくなる |
防腐効果の低下 | 雑菌が繁殖しやすくなる |
保存液は見た目では異常がわかりませんが、効果が弱まっている可能性も。目のトラブルを防ぐには、適正な温度での保管が欠かせません。
結露や水滴による雑菌リスク
冷蔵庫から出した容器に生じる結露は、思わぬ雑菌の侵入を引き起こします。特に保存液に水滴が混じると、抗菌効果が弱まり、感染リスクが高まります。
▼結露による代表的なリスク
結露による影響 | 想定されるトラブル |
ケースやレンズに水滴が付着 | 雑菌の繁殖環境になる |
保存液が薄まる | 抗菌力が弱まり、感染症の原因になる |
水分がレンズに残る | 装着時の刺激や違和感の原因になる |
たとえ一時的な結露でも、目にとっては大きなリスクになります。清潔な状態を保つには、冷蔵庫のような結露が起きやすい場所は避けましょう。
メーカーが推奨する適正な保存環境とは
コンタクトレンズ各メーカーは、保存温度として15〜25℃の室温を推奨しています。冷蔵庫での保管は、設計された使用条件から大きく外れてしまいます。
▼主なメーカーの保存温度と注意点
メーカー名 | 推奨温度 | 注意事項 |
アキュビュー | 15〜25℃ | 高温・低温どちらもNGと明記 |
ボシュロム | 15〜25℃ | 室温で直射日光の当たらない場所 |
クーパービジョン | 15〜25℃ | 湿気・冷気を避けるよう記載あり |
一般的に各社とも、直射日光を避け15~25℃の室温での保管を推奨しています。安全に使用するには、パッケージや取扱説明の指示をしっかり確認してください。
間違えて冷蔵庫に入れてしまった場合の対処法
うっかりコンタクトレンズを冷蔵庫に入れてしまった場合、焦らず冷静に状態を確認することが大切です。保存状態に問題がなければ使えるケースもありますが、正しい判断が必要です。
ここでは、使用前に確認すべきポイントと、使ってはいけない状態、さらに不安なときの対応方法について解説します。
※冷蔵庫に防臭剤などが入っている場合、その成分がコンタクトレンズやケースに影響するおそれがありますので、防臭剤が入っている冷蔵庫では保管しないでください。
使用前にチェックすべきポイント
冷蔵庫から取り出したコンタクトレンズを使う前に、いくつかのチェックポイントを確認しましょう。見た目や保存液の状態から、使用できるかどうかの判断材料になります。
▼使用前に確認すべきチェックリスト
- パッケージが未開封のままか確認する
- 保存液が濁っていないか目視する
- レンズにひび割れや変形がないか確認する
- 開封後なら、装着前に室温に戻す
これらのチェックを行い、明らかな異常が見当たらず、パッケージも未開封であれば、短時間の冷蔵庫保管であれば使える可能性もあります。ただし少しでも違和感があれば、使用中止の判断が必要です。
絶対に使用してはいけないケースとは
一見使えそうに見えても、目の安全のために「絶対に使ってはいけない状態」がいくつかあります。
使用することで目に深刻なトラブルを招くおそれがあるため、以下のような状態が確認された場合は、迷わず使用を中止してください。
▼使用NGとなるケース一覧
状態 | 使用を避ける理由 |
保存液が濁っている・浮遊物がある | 雑菌の繁殖や変質の可能性が高い |
レンズが白く濁っている・ひび割れがある | 素材の劣化により目を傷つける危険がある |
異臭がする | 保存液の腐敗や化学変化が起きている可能性 |
パッケージが膨張・変形している | 内部にガスが発生しているおそれがある |
レンズの異常に気づかず使用すると、角膜炎や視力障害の原因になることもあります。「ちょっとくらいなら大丈夫」と思わず、明確な基準をもって判断しましょう。
不安があるときの正しい行動と相談先
目に入れるものだからこそ、少しでも不安があるときは専門家の判断を仰ぐことが安心につながります。特に、目の異変を感じたときや、保存状態に自信が持てない場合は、自己判断で使用しないことが鉄則です。
▼不安なときにとるべき行動
- 開封せず、まずはレンズの販売店に相談する
- 製品ロット番号を確認してメーカーに問い合わせる
- 違和感がある場合は眼科を受診する
- 目に異常があった場合は直ちに使用を中止する
また、使用前にメーカーの公式サイトやFAQを確認するのも有効。製品によっては対応が異なる場合もあり、信頼できる情報源から確認することが安全への近道です。
正しいコンタクトレンズの保管方法を知ろう
コンタクトレンズを安全に使い続けるためには、正しい保管方法を知っておくことが欠かせません。保管場所や温度、外出時の工夫、ケースや保存液の取り扱いまで、日常的に気をつけたいポイントを解説します。
ベストな保管場所と温度条件とは
コンタクトレンズは室温での保管が基本です。室温は15〜25℃、冷暗所は1〜15℃ほどの範囲とされ、直射日光や高温多湿・極端な低温を避けた場所が理想的です。
たとえば、窓際・車内・ヒーターの近く・冷蔵庫の中といった場所は、温度が不安定でレンズや保存液に悪影響を与えるため避けましょう。
▼適切な保管場所と避けたい場所の例
環境 | 推奨度 | 理由 |
洗面所の棚の中 | ◎ | 温度が安定し、湿気が少ない |
引き出しの中 | ◎ | 直射日光を避けられ、適度に乾燥している |
窓際・車内・暖房の近く | × | 高温になりやすく、保存液の品質が変化する |
冷蔵庫・冷房の直下 | × | 低温・結露によりレンズや液に悪影響が出る |
温度変化が少なく、直射日光や湿気を避けられる場所を選ぶことで、レンズの劣化や保存液の変質を防げます。保管場所は目立たないところより、日常的に確認できる場所にするのも継続のコツです。
外出先や旅行中に気をつけたい保管のコツ
旅行や外出時には、いつもと異なる環境になるため、コンタクトレンズの保管に気を配る必要があります。特に気温や湿度が変化しやすい場所では、工夫次第でトラブルを防げます。
▼外出・旅行時の保管のコツ
- 保存液・ケースは必ず持ち歩くようにする
- レンズは直射日光を避け、バッグの内側に保管する
- 長時間の移動中はクッション付きポーチを使う
- 使い捨てレンズは予備も含めて余裕をもって準備する
旅行先のホテルや飛行機内、真夏の車内などは意外と温度が不安定です。レンズが変形したり保存液が蒸発するおそれもあるため、信頼できるポーチやケースに入れて、できるだけ涼しく乾燥した場所で保管するのがベストです。
清潔に保つためのケース・保存液の扱い方
コンタクトレンズのトラブルの多くは、ケースや保存液の管理不足が原因です。毎日使うアイテムだからこそ、清潔を保つ基本的なルールを知っておくことが大切です。
▼ケース・保存液の正しい使い方
- 保存液は毎回新しいものを使う(使い回しはNG)
- レンズケースは毎日洗い、自然乾燥させる
- ケースは1ヶ月に1回を目安に交換する
- 保存液の注ぎ口には触れず、清潔に保管する
「少しぐらい大丈夫」と思って使い回していると、目に雑菌が入りやすくなり、角膜炎などの原因になります。特にレンズケースは見落としがちな衛生ポイント。こまめな交換と正しい管理で、清潔な環境を保ちましょう。
まとめ
コンタクトレンズは非常にデリケートな医療用品であり、保管方法ひとつで目の健康を左右することがあります。冷蔵庫のような低温環境では、保存液が変質したり、結露によって雑菌が混入するなど、さまざまなリスクが生じるため、絶対に避けるべきです。
万が一冷蔵庫に入れてしまった場合でも、状態を冷静にチェックし、異常がある場合は使用を中止することが大切です。不安があれば、販売店やメーカー、眼科医に相談し、自己判断は避けましょう。
そして何より、日頃から室温で安定した環境に保管し、ケースや保存液の取り扱いも含めて正しく管理することが、安心・安全なコンタクトレンズ使用につながります。ほんの少しの習慣で、目の健康を守りましょう。